2005年8月に「タイポグラフィ学会」が設立されました。学会設立の目的は、タイポグラフィという技芸に学問的な基盤を与え、その成果を実技・実践に生かし、有効で豊かな展開を通して社会に貢献することにあります。
当学会の活動は、上の目的の達成のためにタイポグラフィを専門的に研究発表する場または真摯な議論と考察の結果を表明する場を設けて、広く深い認識を共有することに主眼があります。
タイポグラフィは複製手段である印刷術の現場から生まれたことばであり、印刷術の実践の歴史とともにあります。西洋では550年、わが国では130年の歴史を有しています。タイポグラフィは活字の設計・製造からその有効で的確な使用法を模索し実践する技芸であり、人々の知的生活を支える書籍・雑誌・新聞の普及に貢献し、報道・文芸・学術・教育・商業・娯楽などの分野で不可欠な要素となっています。
21世紀に至り技術革新は実験と試用の時代を経て実用の時代に入り、それに伴いタイポグラフィは時代の抱える新しい課題への対応が求められています。将来の活字文化と文字情報社会の充実に積極的に参加するために、先人による蓄積を尊重し学びつつ、そこに再検討を加える研究や新しい視点からの研究さらには批評的なまなざしを忘れずに、関連する他の分野との学際的な交流を通して、人々の暮しと文化的な活動を支える必要があると考えます。
以上の観点に立って、タイポグラフィに関する課題やテーマに専門家諸氏の英知を結集して研究の光を当て考察を加え、洋の東西にとらわれない学術研究を体系的に推し進める機関を設けるべく、ここに意を決し集まりました。