近年、装幀家、挿絵画家として再評価が著しい小村雪岱であるが、その評価は主に泉鏡花の著書、いわゆる鏡花本の装幀によるものだ。雪岱独自の美意識で、かつ当時の木版摺りという印刷技術で装幀をほどこされた鏡花本の意匠はいまもなお高い評価を得ている。しかしながら、実は雪岱の装幀世界がその独特な画(絵)だけではなく、雪岱独自の文字である〈雪岱文字〉が大きな構成要素としての役割を担っていたという事実は知られていない。また、大正期に在籍していた資生堂において、その和文ロゴタイプの成立にも〈雪岱文字〉は大きく寄与している。そして鏡花の初めての全集となる岡田三郎助の装幀として知られる春陽堂版『鏡花全集』において、実はその函の意匠を雪岱が手がけ〈雪岱文字〉がその装幀の大きな役割を占める構成要素として採用され一つの完成を見ることになる。 本論では雪岱の装幀世界などを成立させる大きな構成要素でありながら、その仕事の中で注目されることのなかった〈雪岱文字〉が、どのように誕生し、どのように展開されていったのかを考察する。
購入希望の方は委託販売している朗文堂の「朗文堂 刊行書のご案内(book-cosmique)」の頁をご参照頂き、お問い合わせください。
頒布価格:1部 3,000円(送料・税別)
学生向け頒布価格:1部 2,000円(送料・税別)