明治初期より隆盛した近代活字については多くの先行研究がある。とりわけ長崎を要地とした活字の製造方法や印刷器機、それらを導入・実用化させた中心人物である本木昌造についてはいうまでもなく、近年においてはそれを事業として全国に広めた平野富二の研究も深められている。また当時製造された活字そのものについても丹念な調査がおこなわれてきていることは周知のとおりである。 一方で、本木昌造らによって製造された「活字の版下を書いた」とされる人物、池原香穉については、近代の平仮名活字書体の源点を考えるうえでは主要な人物であるにもかかわらず、タイポグラフィ史の中において充分な調査や研究がおこなわれてきていない。 本稿では、この池原香穉という、国学者、眼科医、書家、南画家、歌人、宮内省御用掛などの多様な側面を持つ人物について、本木昌造や周辺人物、また手がけた書や著述を含めて、各方面からみていくことで、近代の「平仮名活字書体」の創始におけるその役割と立ち位置を考察する。
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